子どもの「わかった」には段階がある。「本当の理解」の先にある「納得感」とは

西村則康近影

西村則康 名門指導会代表

40年以上、難関中学・高校受験指導一筋のカリスマ家庭教師。
「なぜ」「だからどうなる」という思考の本質に最短で入り込む授業を実践している。受験を通じて親子の絆を強くするためのコミュニケーションをアドバイス、コーチング手法も取り入れ、親子が心底やる気になる付加価値の高い指導を行う。

 長年家庭教師をしていると、子どもが「わかる」「理解する」「納得する」のどの段階を見極めるようになっていきます。
なぜなら、なるほど!と納得した回数が多いほど、新しい知識に対する意欲がわくからです。
ぜひ親御さんにも、お子さんがどの段階にいるのかを注意深く見守っていただきたいので、今回はこのことについてご説明させていただきます。

目次

1. 子どもの「わかったふり」を見極める
2. 「わかったつもり」になっていることもある
3. 「理解する」の先にある「なるほど!」という納得感

1. 子どもの「わかったふり」を見極める

 家庭教師として指導にうかがったとき、私は基本的に、子ども部屋ではなくリビングのテーブルで勉強を見ることにしています。
そこにはお母さんかお父さんにも同席していただくのですが、質問したときに、子どもが「うん、わかった」と言いながら、大人の表情を気にするような様子を見せることがあります。
こういう場合、ほんとうはわかってないのに「わかったふり」をしているケースが多いのです。

 ここで、子どもがわかっていないことをあげつらうような指摘をしてしまうと、子どもが萎縮するだけでなく、勉強が嫌いになってしまうので、そういうことは絶対にしません。
子どもの自立思考を促すためにも、まずは「わかったんだね。えらいね」と、ほめるところから始めます。そして「でも、ここはけっこうむずかしいから、先生もちょっと心配なんだ。だからここの部分だけ、どうしてこうなるか説明してくる?」と言って、私が生徒役になるようにしています。

 子どもを追い詰めることなく、「わかっていない自分」と向き合えるようにしてあげるのです。
特に小学生低学年の場合は、できるだけ同じ目線で寄り添うように心がけています。

2. 「わかったつもり」になっていることもある

 また、子どもはすぐに「わかった!」と言いがちですが、実は「わかった」と「正しく理解している」ことは、まったく別物です。
この「わかった」が、いわゆる「早とちり」の場合も多いので注意が必要です。

 たとえば、算数の図形問題を見て「わかった」という子どもに説明させてみます。
すると「これは直角三角形だから、こうなって…」と説明を始めるのですが、「どうしてこれが、直角三角形だといえるのかな」と質問をしてみると、「あれ?」という雰囲気になることがあります。

 これは勘のいい子の場合が多いのですが、たまたま正解となるケースもあるため、この段階で気づいてあげることが大切です。
裏づけがなく、たまたま正解しただけなので、このままでは成績は安定しないのです。

 「わかったつもり」ではなく、「理解している」段階の子は、答えを導くための論理的な筋道を立てて考えるプロセスをたどっているので、成績が安定します。
算数の文章問題や国語の長文読解など、よりむずかしい問題にも冷静に向き合うことができるでしょう。

3. 「理解する」の先にある「なるほど!」という納得感

 この「理解する」というのは論理的な思考のプロセスですが、「納得する」はそこに感情の動きが加わります。
「なるほど!」という膝を打つような感覚は、自然にわき起こる「知ることのよろこび」でもあります。
新しい知識が過去の経験や体験と結びついた瞬間に快感やよろこびを感じるのは、大人も子どもも同じではないでしょうか。

 何十年も教える仕事をしていると、子どもが「理解している」だけなのか「納得している」状態なのか、何度か指導すればわかるようになります。
テキストに書いてあることや私の言うことが理解できていても、そこに納得がないと、子どもの態度にすぐ現れます。そういう場合、「テキストを見ないで説明できるかな」とたずねてみても、自分の言葉で説明できないことがほとんどです。

 なるほど!と納得すればするほど、子どもの自立思考力は高まります。こういう子はぐんぐん伸びていくでしょう。
お子さんに、できるだけたくさんの「納得」を経験させてあげられたらいいですね。
 

       

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