算数の基盤づくり 〜幼少期からできること〜

西村則康近影

西村則康 名門指導会代表

40年以上、難関中学・高校受験指導一筋のカリスマ家庭教師。
「なぜ」「だからどうなる」という思考の本質に最短で入り込む授業を実践している。受験を通じて親子の絆を強くするためのコミュニケーションをアドバイス、コーチング手法も取り入れ、親子が心底やる気になる付加価値の高い指導を行う。

目次

1. 2023年 算数の入試問題が易しくなった
2. 親が文系だと子どもも算数が苦手になるか
3. 子どもの数感を育てるためにできること
4. 図形の感覚を育てるなら折り紙や積み木

暖かな陽の光とともにあちこちで色鮮やかな花を見かける季節になりましたね。



大手塾では新年度がスタートして1ヶ月が経ちましたが、中学受験生の皆さんは元気にやっていますでしょうか。

1. 2023年 算数の入試問題が易しくなった

さて、今年度の入試分析では算数の難しさに定評がある灘や麻布が例年より易し目の入試問題であったことが話題になりました。



どちらも基礎的な問題・確実に抑えるべき問題が6割〜6割5分を占めており、言い換えれば高得点争いの、決してミスが許されない入試問題だったと言えます。



算数は他教科と比べ1問の配点が大きいこともあり、今年度のような条件下でなくとも中学受験において合否を左右する重要科目として位置づけられています。


「もっと早くから算数に力を入れていたら……」

「大事な場面でミスしない計算力はどう身につけるの?」

「未就学の今からでもできることが知りたい」


そんな声もたくさん聞こえてきていますので、まず今日は幼少期から算数の基盤づくりのために何ができるか、ということをお話ししたいと思います。


2. 親が文系だと子どもも算数が苦手になるか

その前に一つ誤解を解いておきたいのですが、算数の得意不得意に、保護者の方がそのどちらのタイプであるかはあまり関係がありません。



親御さんの中には、ご自身が文系であったことや算数が苦手だったことのせいで、お子さんも算数(理系科目)が弱くなってしまったと罪悪感を抱かれる方がよくいらっしゃるのですが、私は親が理系に強ければ子どもも理系に強い、という考えには私は懐疑的です。



特にそれが、ご自身の数学における成績や得手不得手を指していらっしゃるなら尚更です。


なぜなら数学は多くが方程式で解くものであり、算数とは根本的に異なるからです。
算数は問題を見て、そこから何が分かるかをまず読み取ります。

そして、次に何を求めれば答えが導けるかを考え、その繰り返しを積み上げて解き進んでいきます。

つまり、算数は思考が中心の、いわばもっと身体感覚に近いものなのです。



方程式が得意な「理数」の親御さんはややもすれば解く型を重視しすぎたり、それをお子さんに押し付けて自由な発想に枠をはめてしまったりすることもあるため、「理系」の親御さんがそばにいることは必ずしも受験に有利だとは言えないのです。




ですから親御さんのタイプよりも、以前からお伝えしている通り算数の基盤はやはり日常生活や遊びから得る身体感覚にあり、幼少期のご家庭でお子さんとどのように関わるかこそが、算数の得意不得意を決めると私は考えています。

3. 子どもの数感を育てるためにできること

まず、お子さんが小さな頃から簡単にできる心がけとして、会話の中で親御さんが数字を意識して話す、というものがあります。



例えばホットケーキを切ってあげるとき、
「小さく切る?それとも半分?」
と聞くのではなく、
「3つに切る?それとも2つに切る?」
と聞くのです。



ボーロをあげるときも、
「お母さんと分けっこしようか。1.2.3…9個あるから、代わりばんこに掌に置いていこうね。1.2.3……」
「あれ、お母さんの方が一つ多いね。それじゃあこの1個は◯◯ちゃんにあげる。ほら、合わせて5個になったよ」
といった感じです。



このように積極的に「数」を会話の中に用いて、「分ける」「合わせる」「増やす」「減らす」などの感覚も自然と身につけられるようにできたら良いですね。




足し算、引き算、掛け算、割り算、分数などを身体感覚でイメージできるようになるためには、おはじきや階段も便利です。

おはじきならば5×3で並べて見せて、
「5個並んでいる列が3つできたね。全部で幾つかな」
階段ならば、
「全部で10段の階段、3段目まで登れたね!あと何段かな」
などという具合に、楽しく会話したり身体を動かしたりしながら、数は「順序」だけでなく「量」も表すのだという感覚を身につけておくと、小学校高学年になった時、数量感覚を伸ばすのに生きてきます。



また、「合わせて10」を意識して遊ぶのもおすすめです。


「ここにおはじきが7個あるね。あと何個合わせたら10になるかな?」
といった感じです。
この感覚が身につけば、小学校で繰り上がりの足し算が始まった時に、指を使わず計算できますよ。

4. 図形の感覚を育てるなら折り紙や積み木

ちなみに図形の感覚を育てるには折り紙や積み木がおすすめです。


折ったり切ったり、ぜひお子さん自身の手を動かして図形を変形させる体験を積ませてあげてくださいね。



このような算数の身体感覚を育む環境づくりは、幼少期に親御さんがしてあげられる大きなサポートの一つです。


手先を動かすことは身体感覚を育むだけでなく、脳を活性化することもよく知られていますので、そういった意味でも幼少期にはたくさん手を動かしてほしいと思っています。




少しでも早く英才教育を!と塾や問題集を探さなくても、普通にご家庭の中でできることはたくさんあります。


親子で遊びや会話を楽しみながら算数に親しんでいければ、算数の基礎力が自然と育まれるだけでなく、お子さんが算数を大好きになってくれる可能性も高くなると思います。


算数が好きであれば、就学後も算数の力はどんどん伸びていきますから、是非楽しみに取り組んでみてくださいね。



今日は算数の基盤づくりのために幼少期からできることについてお話ししました。


大事な場面でミスをしない確かな計算力の鍛え方については、またの機会にお話ししますね。


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