目次
1. 算数が得意になる3つの土台
2. 大事な場面でミスしない計算力の大切さ
3. 「読む技術」「自分の書いた数字を見る技術」と計算力
4. 「スピードよりも正確さが大切」と自分に言い聞かせて
先日のコラムでは、算数の基盤作りにおいて幼少期から出来ることをお話ししました。
今回はさらに、基礎学習や計算力の大切さについてお話ししたいと思います。
1. 算数が得意になる3つの土台
算数ができるようになる土台として、身体感覚・生活の知識・基礎学習の3つが欠かせません。
前回お伝えした通り、未就学期〜小学校低学年の頃に最も大切になるのが「身体感覚」です。
手や身体を実際に動かす経験をたくさん重ねることにより図形や数量をイメージできる力がどんどん育まれていき、さらにそれを続けていくことにより、意識的かつ適切に、手・指・目・耳など身体の各部分を自由に動かせる(使える)ようにもなっていきます。
そうなって初めて、算数の基盤作りに必要な要素の一つである「基礎学習」が生きる状態が整うわけですが、基礎学習というのは具体的に言えば、読み・書き・計算です。 今回は、前回お伝えし切れなかったこの基礎学習の部分にフォーカスしながら、ご質問のあった「大事な場面でミスしない計算力」についてもお話ししていきたいと思います。
これから小学校中学年・高学年と上がっていった時に応用問題に対処していけるようにするためにも、読み・書き・計算の基礎訓練を十分行い、熟達させておくことは欠かせません。
熟達というのは、ここでは「頭で考えなくても出来るくらいの状態」を指します。
例えば、漢字やひらがなは頭でいちいち考えなくても、手が勝手に動くかのように正確に書けますよね。
算数のひっ算なども、そのように正確な答えが自然に出せる状態まで持っていくのです。
これまでにもお話ししている「9歳の壁」を越えて受験勉強が本格的になるまでに、このような算数の基盤作りが出来ているのが理想的です。
2. 大事な場面でミスしない計算力の大切さ
そしてご質問のあった「大事な場面でミスしない計算力」ですが、まずお子さんの計算ミスによる失点が、本当にお子さんの言う通りただの「ミス」なのか、それともそうではないのかの見極めが必要です。
計算ミスの種類、そしてその原因を見極めることは非常に難しいものですが、この分析はとても重要です。
よく確かめてみると、お子さんの言う「ミス」は、見間違いや書き間違いなどによる単純なケアレスミスではなく、きちんと理解出来ていないことが原因による失点である場合もあるからです。
もし暗算に暗算を重ねてしまい計算ミスが起きていた場合は、一回ごとに暗算で出た答えをどこかにメモする習慣を身につければ、今後は同じミスを防ぐことができます。
数字の書き間違えや見間違えによる計算ミスの場合は、その時の心理状態や姿勢を確認し、それらを改善することで防げるようになることもあります。
お子さんが自分の失点を、単純なケアレスミスが原因ではないのに「ミス」であると最も勘違いしてしまいがちなのが、計算の順序を間違ってしまった場合です。
このケースの多くは、もともと計算の順序についてしっかりと理解していなかったために起きています。
つまりこれは、たんなる計算ミスではなく「理解不足」ですから、必要な部分を学習し直さなければ次回以降も同じことが繰り返されてしまうのでよく気をつけなくてはなりません。
このように、まずは生徒さんの「ミス」の種類をきちんと見極め、必要であれば「理解不足」であった部分をまずはしっかり補いましょう。
3. 「読む技術」「自分の書いた数字を見る技術」と計算力
そして、複数の計算が必要な文章題で慌てんぼうの生徒がやりがちな「うっかりミス」を起こさないようにするために、「読む技術」と「自分の書いた数字を見る技術」も欠かせません。
何を問われているのか。
どのように答えれば良いのか。
どのように導き出すことができそうか。
自分が今導き出した計算の答えは、そもそも何であったか。
その数字をそのまま問題の答えとして良いのか。
それともそれを利用してさらに計算することが必要なのか。
ミスをしないためには国語力も必要です。
しかし、今直ぐにでも出来ることは、「計算結果の後ろに必ず単位をつける習慣」を身につけることです。
計算結果が出るたびに単位をつけることは、問題の主旨と、今自分が行った作業や導いた数字をいちいち照らし合わせることになります。
ですからこの習慣が付けば、最終的な答えを導き出す前段階で導き出した数字を最終的な「答え」としてしまう類のミスはすぐに減らすことが出来るのです。
そして何より、くだらない計算ミスを防ぐためには四則計算(+、-、×、÷)をしっかりやること。
当たり前のことですが、やはり筋トレのように毎日計算を行うことが一番です。
週末にまとめてではなく、毎日決まった量をこなすことを習慣づけ、継続しましょう。
量は学年×10分で出来るくらいで、難易度も高くなくて良いので、気軽に続けられるプリント教材やドリルで楽しく続けましょう。
朝食前やお風呂の前、夕飯の後など、毎日決まった時間にやるのがおすすめです。 そしてその時に大切なのは、親御さんが欲張ってどんどん量を増やしたり、難度を上げたりしないこと。
「毎朝2枚続けていてえらいね。今朝は時間があるから5枚やってみようか」 というような感じでいつの間にかドンドン枚数を増やしてしまい、せっかく楽しく継続していた学習がいつの間にかお子さんの大きな負担になり、結局頓挫してしまう、というのはよくあることです。
どうか欲張りにならず、計算の習慣が続いていることをしばらくはただ褒め続けてあげてください。
親や先生が無理難題を押し付けたり、過度なコントロールをしたりしなければ、お子さんはやがて自然と自分から量を増やしてみたいと思ったり、もう少し難しいものにチャレンジしてみたいという気持ちになるものです。
4. 「スピードよりも正確さが大切」と自分に言い聞かせて
また、もしもお子さんの計算練習を見ていて「もっと速く!」と口出ししたくなってしまったら、「スピードよりも正確であることがまずは第一」とご自身に言い聞かせ、お子さんのペースを温かく見守ってあげてくださいね。
答えが正確に出せなければ、どんなに速くても仕方ありません。
計算テストなら1問間違えれば1問分の失点で済みますが、文章題の場合は小問が2.3問続くこともあり、1つ間違えばそれらも連動して失点してしまうことも少なくありません。
算数の成績を上げるには、大前提として暗算・筆算共に「計算は常に100%ミスなく出来る」必要があるのです。
ですから、計算のスピードを上げるのはまた次のお話。
「急げ」と急かすのではなく、我が子の計算が遅い原因は何だろうと、しっかりと分析してから指示を出し、教材や環境を提供していくことが大切です。
それについては、またの機会にくわしくお話ししますね。
受験生の皆さんが早い時期から算数の基盤づくりをしっかり行い、確実に力をつけていけるよう願っています。
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